特 選

『鱗』

【講評】
アフレコの処理で少し惜しいところがありましたが、とても素敵な、せつない作品に仕上がっています。
晴子の顔をしっかりと映さないのは何か制約があったのかもしれませんが、撮影に工夫が凝らされていて、演出的な効果を挙げています。
冒頭の二つならんだ蛇口、滴る雫、花瓶に溜まる水(後に花が挿される伏線にもなっている)メトロノームの使い方など随所に映画らしい演出が施されていました。
紙飛行機のシーンも素晴らしく、満開の桜の枝に引っ掛かっていたところを佐藤先生が開いたら「守ってくれてありがとう」のコメント・・・。これは、完全に私的な感想になってしまいますが、涙が零れました。

『RE:DUMMY』

【講評】
前回大会の出展作の世界観を見事に表現してくれました。惜しむらくは、音声のレベルに問題があったこと。重要なセリフが聞き取れないのは致命的なので、伸びしろがあるという風に前向きに考えてほしいのですが、ぜひクリアしてほしいと思います。
プロローグからタイトルへの導入部は最高。モンタージュ技法、モノクロームやアップの使い方、スモークや水槽、ファンなど手近な物を上手に利用してSF的な画面を作る工夫など見事な演出で唸らされました。
音声の処理に問題がありましたが、音楽と画面のシンクロ(小節に合わせて画を切り替える絶妙のリズム感、テンポ感)など作り手として非凡なものを感じ、将来がとても楽しみです。ファイティンッ‼

『きみの一部とわたしの全部』

【講評】
踏切のシーン、主人公の少女の姿の消し方、信号の音による緊張感、緊迫感。踏切に向かって水平をずらして坂道に見せた演出。すべてに無駄がなく(冗漫にならず、作品にテンポをもたらしている)パーフェクトと言える出来映えです。
黄色いガーベラの花の印象的な使われ方。左手の包帯の印象的な挿入など、不幸な結末を暗示しているようで観手を不安に誘うので、ラストのシーンの効果を一層高めています。本当に素晴らしい見事な映画作品です。

『憶い、ふたつ。』

【講評】
とても切ない素敵な物語に仕上がっています。
1点だけ、あえて指摘します。杏奈が気付くきっかけを補強する為かもしれませんが、姉妹が示し合わせて「替え玉」をしていたのであれば、学校での出来事などを話して聞かせているのが自然だし、思い出ノートも本物の夏美が学校生活に戻る事に備える用途をもっている物だと思いました。少なからぬ違和感を覚えましたので、敢えて厳しい指摘をさせて頂きました。
ラストシーン、引いていくカメラ、音楽の入り方、暗転へのフェードのタイミング、鳥肌が立つほど素晴らしかった。
これからも素敵な映画をいっぱい作ってください。ファイティンッ‼

『オ悩ミ解決事務所!』

【講評】
冒頭の校内を駆けるシーン、素晴らしい!
その他にも随所に唸らされるカメラワークが見られ、作品の世界に引き込まれました。
タナカ(師匠)が新聞部員に扮したシーンはメガネを効果的に使うことで、如何にも新聞部という雰囲気を出していましたが、声の出し方を変える等演技に工夫も見られとても好感しました。
ストーリー展開も無理がなく、立て続けの依頼が「繰り返しのギャグ」になっていて笑えましたし、コメディを研究しているなぁと感心させられました。

『Simp for…?』

【講評】
主人公の心の揺れをコラージュを使って表現したところ、スマホで撮影した画像などを使うことでSNS社会のリアルを演出した点をとても好感しました。
それから、セリフがとてもいいですね。心にスッと入ってきます。物語の展開もテンポがあってとても良いです。
カットのつなぎ方、一つ一つの画面がとても映画的で素晴らしいです。冒頭から作品に引き込まれてしまいました。
作品全編を通して作り手の豊かな感性と映像センスを感じました。

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