秀 作

『兄弟の製作方法』

【講評】

お兄さんが苦悶の表情を浮かべながら歩いているシーン良かった。
「お兄さん」「兄ちゃん」「兄貴」どの人格が本当の弟の人格なのか描き切れていなかったのが残念。
最後の「さよなら」というセリフが唐突で驚いてしまった。「ブラコン」が兄弟を呪縛する言葉になってしまったという事なのか…。記憶喪失と多重人格による昏睡、設定に無理があるのかもしれませんね。一考の余地があると感じました。

『リアルスクール』

【講評】
4人の中高生を繋いで1本の映画作品を紡ぎだしたアイデアが秀逸。
コロナ禍の制約を逆手にとって舞台劇にも通じる設定も良かったと思います。
カメラをマルチにすることで画面に変化を出したことが作品のテンポを生み出しました。
演者の活舌が全篇を通して今一つなので、演劇部やアナウンス部の発声練習を取り入れるのも良いかもしれません。

『消失』

【講評】
斜めの画面構成(冒頭の階段、平衡を外す撮影など)緊張感を出していて効果的な演出でした。暗転の使い方も巧いと感じました。
花、円、木、青空(椅子、ペン、消しゴムの文字にも青が使われている)をモンタージュして名前が少しずつ消えていく展開も良い。
残念なのは、花が消えた後の教室のシーンで名札がフルネームに戻ってしまっているので、???あれれっと思ってしまいました。
また、自動販売機で100円玉をモンタージュしたところで名札は青木になっている筈なのにロッカーに置かれて初めて青木になったのも残念。細かい指摘ですが、作品作りでは、最後の最後まで気を抜かず細心の注意を払いましょう。

『sorcere』

【講評】
16年の映画甲子園の歴史の中で作品テーマに取り上げられる事の多い「いじめ」。この作品は並行世界を上手に活かして2つの世界で主客転倒する事で主人公がいじめの本質に気付くところが秀逸で、おっ、と思わされました。
演者たちのセリフがマスクをしていることもあり、聞こえ辛かったのが残念でした。COVID-19のパンデミックは暫く続きそうな気配です。そんな中での映画制作は大変だと思いますが、演者の口元が見えないことを逆手に取ってアフレコにするなど、工夫を凝らしてみてください。

『納期へのカウントダウン』

【講評】
キーボードを叩く手(二本指)が主人公と言う発想が最高に面白い。
納期が黒い手で追ってくるラストシーンではお腹がよじれるほど爆笑してしまいました。
毎回、思わずクスっとさせられる楽しい作品を出展頂いていますが、本作は、とてもシュールでエッジが効いた短編作品で、オススメの映画です。

『恋愛ダービー』

【講評】
テンポの良い軽妙なコメディに仕上がっています。
競馬の実況の様なアナウンスも効果的な演出でした。
ラストの屋上のシーンにカメラとマイクを持った男子が映っていたので、彼が物語の登場人物の一人だという事がわかりましたが、サプライズを重視するなら映さない方が効果が上がったもしれませんね。でも、作り手の意思がそこに表れているので好感しました。

『大切な人』

【講評】
恋愛映画というよりサスペンス映画とする方がしっくりくるほど怖い作品。
タイトルの赤い文字が揺れている時点でそんな予感はありましたが、予想以上に恐ろしさを感じました。
韓国ドラマにはラブコメなんだけれどサスペンスの要素が強かったり、シリアスドラマなのにコメディの要素が強い作品がありますが、まさにそんな作品になっています。

『BUNMEI』

【講評】
Adoを彷彿とさせる作品。
アニメーションもしっかりとしていてもう少し長いバージョンを見たく(聞きたく)なりました。
他校の作品(ドラマ)もテーマに取り上げていましたが、スマホ(情報)社会=現代文明への警鐘(メディアリテラシーの啓蒙)を同年代の視点から映像作品に仕上げて鳴らすことは素晴らしいと思います。

『夢のない夢から醒めるまで』

【講評】
主人公の視点でストーリーが展開していく作品。VR的でユニークだと思います。
セリフを文字にすることで観手が作品世界にいる事を邪魔しない工夫も好感しました。進路の質問票「夢」を書き込む事に躊躇(迷い)のある主人公の手の演技がとても良かったです。
画面に工夫が施されているので映像作品的にも優れたものになりました。

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